全国鯉釣り協会の会員で作るコラム『@釣り』

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最近思うこと? 鯉に「体格指数」を適用したらどうなる

全国鯉釣り協会 東日本ブロック 事務局・広報担当
紫峰釣友会 岩ア 寿久

  注) 以下の内容は、「全国鯉釣り協会 2018年会報」に投稿したものです。

 さて、下のグラフがなんであるか 考えてみてください。
「1999秋」とは、全鯉協東日本ブロックの1999年秋季鯉釣り大会を意味します。棒グラフは左側の「指標A」で、折れ線グラフは右側の「指標B」で見てください。
グラフ1
 このグラフは、1999年秋季の水郷鯉釣り大会からの鯉の部の優勝サイズをグラフ化したものです。
「指標A」は、鯉の部の優勝サイズcmです。
指標Bは、重量÷全長で、全長1p当りの重さkgを表しています。

グラフ2  そこで、右上のグラフを見やすくするために、例えば「1999年秋〜2001年秋」の5回の大会の平均値を2001年秋にプロットし、以後1年ずつ移動平均して表したものが右のグラフです。
こうすると、水郷での鯉の部優勝サイズの傾向が見えてきます。
表1  より具体的に比較できるのが2004年春季〜2005年秋季、2016年春季〜2017秋季の各大会の入賞のサイズとその平均サイズを表した右の表です。
2004年・2005年頃は、102cm/16kgほどのメーター鯉を釣らないと「優勝」はできず、10位に入るのも96cm/9kgほどの鯉を釣り上げることが必要でした。
 しかし、この2年間の平均を見ると、90cm弱/7kg強の鯉で優勝しています。
特に、2016年秋からは「10位までの表彰対象に釣果が満たない」、すなわち釣果として大会規定サイズ以上の鯉を検量所に持ち込む方達が10人以下となってしまいました。
 入賞者の平均釣果を見ても、この12年間での水郷の鯉の小型化がハッキリと分かります。
では、なぜ小型化し、さらには釣れなくなったのか?
このことは、2018年会報で西日本ブロック会長のご挨拶文でも触れていました。

霞ヶ浦において養殖鯉の大量死が発生したのが、2003年10月です。

『1996年にイギリスで発生した大量死の際に死んだコイからコイヘルペスウィルスが検出されていることが報告されており、今のところこれが最も古いコイヘルペスウィルス病(KHV病)の確認例である。
その後、1997年にドイツで確認され、1998年には、イスラエルやアメリカ合衆国、アジアでは2002年、コイ養殖が盛んなインドネシアや台湾での流行が確認されている。
2003年10月、霞ヶ浦において養殖鯉の大量死が発生。茨城県内水面水産試験場での検査結果を受け11月2日に農林水産省はKHV病が大量死の原因であると公表し、これにより日本国内へのコイヘルペスの持込みが確認された。11月2日、茨城県は出荷自粛を指導し、11月12日には持続的養殖生産確保法にもとづいてコイの移動禁止命令を出した。しかし、広大な湖に拡散したウイルス駆除は不可能であるため、養殖鯉業者が感染拡大を防ぐためにすべての養殖鯉を処分。全業者が事実上廃業状態となった。』 Wikipediaより転載
前記のグラフは5回の大会の移動平均(2年半の間の平均)なので、急激な変化は読み取れませんが、「霞ヶ浦において養殖鯉の大量死が発生した2003年10月」頃は、まだまだ大型の鯉が釣れ、2005年〜2006年頃をピークに、2008年〜2009年頃から小型化した様子が見えます(2011年春季大会は、東日本大震災により中止)。
 一方では、前記のグラフ-2の棒グラフで示した「鯉の小型化」は止まらないものの、折れ線グラフで示した「鯉の全長1p当りの重量kg」は上昇カーブを描いています。
これにより、痩せの傾向に歯止めがかかったとも読み取れます。今後は、この鯉の成長により、サイズの回復に期待するばかりです。

 さて、ここからが今回の考察です。
一般にBМI (Body Mass Index) と呼ばれる「ボディマス指数」は、皆様ご存知のように体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数です。
   BМI=体重kg÷(身長m×身長m) 単位は“kg/m2”。
では、魚類の体格はどう表すのだろうか? ネットで調べるといくつかの方法があるが「ローレル指数」(Rohrer index)を使っての論文があった。このローレル指数は、児童・生徒の肥満の程度を表す体格指数ですが、これを魚類に当てはめて体格を検討しています。
   ローレル指数=体重kg÷(身長m×身長m×身長m) 単位は“kg/m3”。

 では、2017年全鯉協GC鯉の部の体格をこの二つの指標で見てみましょう。

体格1位は島田健治氏の96cm 18.6kgの鯉  体格2位は津田誠氏の96cm 17.8kgの鯉
島田 津田
BMI 20.2  ローレル指数 21.0     BMI 19.3  ローレル指数 20.1

津田  さて、最も重かったのは津田誠氏の鯉(右写真)で104cm 19.3k。
この鯉は、BМI 17.8  ローレル指数17.2となり、上の2本の鯉には体格指標で勝てません。

 そこで、下記の条件でグラフを作り直してみることにしました。
   比較期間 2004年春季大会 〜 2017年秋季大会
   比較データ 2017年春の釣果が5本のため、これに合わせて各大会上位5本の体格係数の平均値をデータとする。
 こうして作ったのが、右下のグラフです。
津田  この二つの指標で、水郷の鯉に関して 体格の推移を見てみましょう。

 BMIで見ていくと、2012年以降 水郷系の鯉の体格は横ばいというデータです。
しかし、ローレル指数で見ると やや右肩上がりで「体格が改善傾向にある」という見方ができます。
これは、BMIが一般成人に対する体格指数であるのに対して、ローレル指数が「児童・生徒の肥満の程度を表す体格指数」であることに起因していると考えます。
すなわち、伸び盛りの児童・生徒の体格はローレル指数で、身長の伸び止まった成人の体格はBMIで評価するのが正しいとすれば、全長の成長が止まっているメーター鯉の体格はBMIで評価し、80cm程度のまだ伸び盛りの鯉の体格はローレル指数で評価するのが適していると言う訳です。
最近の大会で釣れているのはこのサイズですから、まさに最近の水郷の鯉の体格をローレル指数で見て 体格が向上傾向にある という私の見解の根拠なんです。

 この推論が正しいことを祈るばかりです。

※ 追記:Lake HARUNA F.Cの内林氏が2018年GWの琵琶湖遠征で釣り上げた鯉は下記の通り、立派な体格の鯉です。

2018年4月28日 101cm 20kgの鯉           5月1日 102cm 23kgの鯉
101p 102p
BMI 19.2  ローレル指数 19.4        BMI 22.1  ローレル指数 21.7

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