全国鯉釣り協会・東日本ブロック/外来生物の取り扱い

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 その他に、管理人及びその協力者の取材情報を基にした部分もあることをご承知おきください。


                                   調査日:2025年8月2日
調査:外来生物の取り扱い

                                全鯉協東日本ブロック事務局
                                        岩ア 寿久

1. はじめに

 鯉釣り大会で釣れる魚の代表としては下記がある。
    鯉、青魚、連魚(黒連)、草魚
    アメリカナマズ、ニゴイ、ブラックバス、ブルーギル、ボラ、・・・
そして最近は、ウキ釣りをすると「ダントウボウ」が必ず釣れると云っていいほどになった。
しかし、大会での対象魚は上段の5種であり、下段の魚は原則対象外となっている。

 そこで、下段の魚が釣れたときの対応をどうすべきかを調べてみた。

2. 結論

 釣れた魚を釣り場に放置すると河川法・廃棄物処理法・軽犯罪法違反に問われる。
法令違反にならないためには、下記の方法が考えられ。
 1) 水郷一帯であれば、「キャッチアンドリリース」する。
   注記)都道府県等の条例で、これを禁止している条例があるので、茨城県以外は確認が必要。
 2) 釣り上げた後、@持ち帰るか A行政等が指定した場所に持っていく。
    ただし、アメリカナマズ・ブラックバス・ブルーギル等の特定外来種は、生きたままの移動が
   法令で禁止されているので、魚を締めた(しめた)後に移動すること。
   なお、特定外来種以外の魚のときは、生きたままの移動も法令的には問題ない。

そこで、大会では、法令で移動が禁止されているアメリカナマズを特別賞等の対象としない。

3. 調査の内容

 平成17(2005)年6月に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」
(平成16年法律第78号)は、令和7(2025)年6月に一部を改正して現在に至っている(以下「特定外来
生物法」という。)。
 さて、2025年8月2日現在の環境省の「特定外来生物等一覧」及び(独) 国立環境研究所 侵入生物
データベースによれば、
   コイ(鯉)、ハクレン(連魚)、及びコクレン(黒連)の法的取り扱いは「その他」
   ソウギョ(草魚)・アオウオ(青魚)は「要注意外来生物」
   チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)、ブルーギル、コクチバス、オオクチバスは
「特定外来生物」だか、外来種の新参者であるダントウボウの掲載はない。
     注記) ダントウボウは、調査した時点では「特定外来生物」に指定される前の段階の
        「生態系被害防止外来種リスト」の候補に挙がっている。
なお、ボラは在来種です。
 また、「外来種」「外来生物」「特定外来生物」の違いに注意が必要です。
外来種:自然分布域(その生物が本来有する能力で移動できる範囲により定まる地域)の外に生育
   又は生息する生物種。
    もともと国内の他の地域に生息しているけれども、本来は生息していなかった地域に人間の
   活動によって持ち込まれた生物(国内由来の外来種)も含まれる。
外来生物:海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することと
    なる生物(国外由来の外来種)
    導入:意図しようが意図しまいが人為的に、ということです。
       例えば、コンテナで荷物と一緒にまぎれて国内に入ってきた生物も含まれますが、
      自然にやってきた渡り鳥や海流で運ばれてきた生物などは対象外。
    注記)外来生物法では国外由来の外来種に焦点を絞り、人間の移動や物流が盛んになり始めた
       明治時代以降に導入されたものを中心に対応している。
特定外来生物:外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害
    を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定された生物。

「外来種>外来生物>特定外来生物」ということになります。

 まず、茨城県HP「釣りに関するよくあるQ&A」には次の記載があった。

Q:堤防にアメリカナマズが放置されていた。
A:釣りのルール等については霞ケ浦北浦水産事務所の管轄ですが、堤防へのアメリカナマズも含め、
  魚の放置、投棄については、堤防を管理している国土交通省霞ヶ浦河川事務所もしくはその施設の
  管理者へお問い合わせください。
   外来生物法に関しては、環境省HP「日本の外来種対策」ページのQ&A(外部サイトへリンク)を
  ご確認ください。それ以外の法令に関する不明点は、環境省関東地方環境事務所へお問い合わせ
  ください。
   釣れてしまった場合は、その場でリリース又は締めて持ち帰ってください。
  その場でのキャッチ&リリースは問題ありません(現在の茨城県の場合)。
  生きたままの運搬は外来生物法により禁止されていますので、持ち帰る場合はその場で必ず締めて
  ください。

 そこで環境省のHP(環境省>自然環境局>外来生物法>外来生物法に関するQ&A)を確認すると
次のような解説があった。

Q9 : 特定外来生物を釣ることはできますか?(釣り大会開催時の注意点)
□ 特定外来生物に指定されていても、釣りをすることはできます。
   禁止されることは、例えば釣った魚を持って帰って飼うこと、移動させて放流することです。
  したがって、釣った特定外来生物をその場で放す「キャッチアンドリリース」は問題ありません。
  また、釣った特定外来生物をその場で締めた上で、持ち帰って食べることも問題ありません。
     ⇒ 釣り人向けのリーフレットを別途添付します。
□ なお、都道府県によっては、条例により外来生物の「キャッチアンドリリース」を禁止している
  場合もありますので、ご注意ください。
   注記) 2025年8月2日現在、茨城県では当該条例はない。
□ 特定外来生物(特にオオクチバス)の釣り大会については、特定外来生物として規制(指定)
  された後も引き続き行うことができますが、その際には次のとおりの注意が必要です。

釣り大会開催時の注意点
□ 問題ない行為
 ◇ 釣った河川・湖沼の河岸・湖岸に隣接する道路に至らない範囲での生きたオオクチバスの運び
   移しは問題ありません(河岸・湖岸隣接道路に至らなければ、公園、マリーナ、漁港(漁港内
   の道路は漁港の一部と考えます)等での取扱いも同様です)。
 ◇ 釣った河川・湖沼に戻すか殺処分することが明らかな状況で、数時間生きたオオクチバスを
   取り扱うことは問題ありません。
 ◇ 釣り人が、大会主催者に検量のためにオオクチバスを一旦預け、検量後直ちに返却してもらう
   など、当該釣り人が当該特定外来生物の「事実上の支配」を継続していると認められる場合は
   問題ありません。
□ 外来生物法に違反するため対応が必要な行為
行為の内容
(違反行為)
必要な対応
(違反にならないための対応法)
釣り大会で釣ったオオクチバスを、釣り
大会後もリリースせず、生きたまま取り
扱うことは違反行為となります。
釣ったオオクチバスは、釣り大会終了までにリリース
するか、殺処分する。
釣ったオオクチバスを、生きたまま釣った
河川・湖沼以外の河川・湖沼に運び移すこ
とは違反行為となります。
釣ったオオクチバスを、釣った河川・湖沼
に隣接する湖沼周回道路等を経て検量所に
生きたまま運び移すことは違反行為となり
ます。
釣ったオオクチバスを生きたまま運び移す場合は、釣っ
たのと同一湖沼若しくは釣ったのと同一性・一体性の
ある河川水域又はそれぞれに隣接する陸地の範囲で行う。
(注:湖沼・河川については、たとえ水系でつながって
いるものでも、国土地理院発行の地図で名称が付されて
いる湖沼・河川ごとに「別の湖沼・河川」とみなします。
また、堰などで魚の動きが制限されている河川について
は、その堰などをまたがって「同一性・一体性のある河
川」とはみなしません。)
釣り大会を、複数の湖沼や、河川の一定
水域と言えない範囲で開催し、当該開催
地内で釣ったオオクチバスを生きたまま
運び移すことは違反行為となります。
釣り大会の開催は、同一湖沼又は河川の一定水域に限って
行う。
釣ったオオクチバスを、生きたまま釣っ
た河川・湖沼以外の河川・湖沼で放つこ
とは違反行為となります。
キャッチアンドリリースは、釣ったのと同一湖沼若しくは
釣ったのと同一性・一体性のある河川水域又はそれぞれに
隣接する陸地から行う。
検量のため、生きたオオクチバスを他者
に引き渡す(例:釣ったオオクチバスを
大会主催者が検量するために、釣り人が
長時間当該オオクチバスを大会主催者に
預ける)ことは違反行為となります。
検量は、釣り人自ら行うか、釣り人の「事実上の支配」を
維持した上で大会主催者が行う。
検量された生きたオオクチバスを、大会
主催者(釣り人以外)が釣った河川・湖
沼に放つことは違反行為となります。
キャッチアンドリリースは、釣り人自ら行う。

 以上が、環境省の Q&Aです。
 この中にある「オオクチバス」は特定外来種です。そして、鯉釣り大会で釣れるアメリカナマズも
特定外来種です。
そこで、全鯉協大会で特別賞を狙ってアメリカナマズが持ち込まれたことを想定してみます。
上の表で、「オオクチバス」を「アメリカナマズ」に書き換えて読んでください。
 例えば、水郷一帯の水域は、同一性・一体性のある河川とは見なされません。
上の表の右側中段にその説明があります。よって、常陸利根川で釣った特定外来種のアメリカナマズ
を、大会の検量所である前川に持ち込むことは法令違反行為となります。
また、前川で釣ったアメリカナマズであっても、上の表の左下に説明があるように、検量後に
大会主催者である全鯉協関係者がアメリカナマズを前川に放つことは違反行為となります。
これにのことから、特定外来種のアメリカナマズは釣り場から移動できず、釣果対象外とすべき
と考えます。
 特定外来生物でない外来魚は、生きた状態での移動は特定外来生物法の違反行為にはなりません。

 では、釣れてしまった外来生物はどうすればいいか・・・

 一般社団法人茨城県環境管理協会では「令和7年度釣り魚有効活用促進事業 −霞ヶ浦・北浦で釣れた
釣り魚を有効活用します!−」を展開しています。
事業概要
  霞ヶ浦と北浦で盛んな釣りを通して、釣り魚の回収と有効利用を図ります。
  回収した釣り魚は、魚粉工場へ運搬し、飼料等の原料に加工され、養殖魚や家畜のエサに生まれ
  変わります。
  2025年の場合、霞ヶ浦で釣れた魚の回収を下記日程で行っており、ご協力いただける方は、
  回収場所への持ち込みをお願いいたします。
実施日時  4月26日(土)、5月24日(土)、6月7日(土)、6月28日(土)、7月5日(土)、7月12日(土)
      8月9日(土)、8月23日(土)、9月13日(土)、9月27日(土)、10月18日(土)、11月15日(土)
     回収時刻はいずれの日程も午前10時から午後12時30分まで
回収場所  行方市観光物産館こいこい駐車場(湖岸側)
      天王崎公園駐車場脇(北側にある東屋)
      茨城県霞ケ浦環境科学センター

 最後に、釣れた魚を釣り場に放置したらどうなるか

 国土交通省 荒川上流河川事務所が出している看板によれば、河川法違反及び廃棄物処理法違反に
なるようです。
また、軽犯罪法、第一条27号「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物
を棄てた者」にも該当するようです。

看板
  

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